在留資格の取消し該当事由に当てはまった場合でも、いきなり在留資格を取消しにして出国命令が出されるわけではなく、入管法所定の手続を踏む必要があります。所定の手続きを踏まずに、在留資格が取消されることはありません。
在留資格取消事由に当てはまったことを入管が認識しても、直ぐに取消し手続きせずに、更新時に不許可にすることもあります。聴聞などの手続きをせずに、在留資格を失わせるという目的をはたすことができるからです。
①意見聴取通知を送達
法務大臣は、急速を要する場合を除いて、当該外国人に対して、意見聴取通知書を送達して、意見聴取の期日および場所ならびに取消しの原因となる事実を通知します。
②通知から意見聴取期日まで
通知から意見聴取期日までの間、当該外国人が準備すること
期日おいて出頭する代理人を選任
この代理人となれるのは、未成年者の親権者、後見人等の法定代理人のほか、在留資格の取消しの対象者が代理人として委任した弁護士などです。
利害関係人の参加を申し出
利害関係人とは、入国審査官の求めまたは許可により、在留資格の取消しの処分につき利害関係を有すると認められる者の参加を申出ます。
調書や取消原因に関する資料の閲覧
意見聴取の指定された期日に、正当の理由がなく、当該外国人及び代理人が出頭しない場合には、法務大臣は、意見聴取を行わずに在留資格を取消すことができます。
代理人となった弁護士が期日の変更の申し出た場合は、法務大臣は、必ず、変更を認める必要があります。
③意見聴取期日において
意見聴取期日において、入国審査官は、当該外国人に対して、取消しの原因となる事実を説明し、在留の目的や在留状況に関する意見を聴取しなければなりません。
意見聴取の場で、当該外国人は代理人とともに、意見を述べたり、審査官に質問を発したり、証拠を提出したりすることができます。
ここで、充分な反論をすることで、悪質でないと判断されれば、救済されることもあります。
④意見聴取期日終了後
期日を終了して、法務大臣が在留資格を取消す場合は、在留資格取消通知書を在留外国人に送達します。
出国準備期間が付与される場合
取消し事由が入管法22条の4第1項1号および2号の場合を除いて、30日以内の出国準備期間を指定されることになります。
この出国準備期間、短期滞在や特定活動等の在留資格ではないため、いったん出国準備期間が付された場合は、別の在留資格へ変更する余地はなく、当該期間内に出国しなければ、不法在留となり、退去強制の対象となります。この期間内に出国した場合は、適法な出国となるため、退去強制の対象とならなくても済みます。
退去強制となる場合
取消し事由が入管法22条の4第1項1号および2号の場合には、そもそも出国準備期間が与えれる余地はなく、在留資格が取消されると、直ちに退去強制の対象となります。
入管法22条の4第1項1号および2号の場合とは、上陸拒否事由該当事実を隠蔽し、あるいは、在留資格該当性を偽るなどの重大な不法行為を行ったという悪質性が強い場合に該当します。
退去強制された外国人は、上陸拒否の特例などの例外はありますが、一般的に、1回目の退去強制の場合は送還から5年間、2回目以降については、10年間、上陸拒否事由に該当し、原則として日本に上陸することはできません。
(在留資格の取消し)
第二二条の四
一 偽りその他不正の手段により、当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第一節又は第二節の規定による上陸許可の証印(第九条第四項の規定による記録を含む。)又は許可を受けたこと。
二 偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第一節若しくは第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)又はこの節の規定による許可をいい、これらが二以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)の申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位を有する者としての活動のいずれかに該当するものとして、当該上陸許可の証印等を受けたこと。